代表取締役 十倍直昭
2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
https://www.instagram.com/naoaki_tobe/【令和のマストバイヴィンテージ Vol.6】
by Naoaki Tobevol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第6回はセックス・ピストルズのポスター「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」編。
今、ヴィンテージポスターを買うべき理由
「ヴィンテージのポスターにも価値があるの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、もちろん答えはYesです。それどころか、今後ヴィンテージのカテゴリーの中でポスターの存在感はますます高まっていくだろうと僕は考えています。というわけで今回ご紹介するのは、「セックス・ピストルズ(SEX PISTOLS)」が1979年に発売したアルバム、「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル(The Greaat Rock'n'Roll Swindle)」のポスターです。
セックス・ピストルズの実質的な活動期間は約3年と非常に短いですが、その後世界のカルチャーに与えた影響は計り知れません。音楽ジャンル、そしてファッションとしての「パンク」は今も若者たちを引き付けていますが、もしセックス・ピストルズがいなければパンク・ムーブメントはここまで大きな存在にならなかったのではないでしょうか。
一時代を築いたセックス・ピストルズなので、もちろん彼らに関するヴィンテージウェアもたくさんあります。中でもメンバーが実際に着用していたウェアを手掛けていたのが、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)です。ボンテージパンツやパラシュートシャツ、そして超が付くほど過激な内容のプリントTシャツなど、ヴィヴィアン・ウエストウッドによるセックス・ピストルズ関連のウェアは名作揃いですが、熱狂的なマニアが世界に多数存在するので、非常に高額です。
そこでオススメしたいのがポスター。Tシャツなどと比べると、まだそれほど価値は高騰していません。実際にこの「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」のポスターも、状態にもよりますが大体15万円から25万円くらいで購入することができます。しかも、これはポスターのなかでは高額な部類。人気のバンドや映画のヴィンテージTシャツは今や数十万円が当たり前となったヴィンテージ業界ですが、ポスターなら数千円から5万円くらいで買えるものも多いです。歴史的に価値ある当時のオリジナルアイテムをこれくらいの価格で入手できるのは、ポスターならではの魅力と言えるでしょうね。
NIGO®氏も寝室に飾る、アメックスから苦情が入ったパロディポスター
一目瞭然ですが、このポスターはアメリカン・エキスプレスのクレジットカードのパロディです。当然現代ならコンプライアンス的に実現できないであろうデザインですが、実は当時も大きな問題になりました。アメリカン・エキスプレスからレコード会社にクレームが入り、このポスターは回収となってしまったんです。
そういった経緯もあり、今日本に数十枚しか存在しないと言っても過言ではないような激レアアイテムではありますが、そういった裏話よりも僕はこのスタイリッシュなグラフィックに魅力を感じています。デザインを手掛けたのは、グラフィックデザイナーのジェイミー・リード(Jamie Reid)。彼もヴィヴィアン・ウエストウッド同様、後世に大きな影響を与えたカリスマですね。このポスターはファッション業界にもファンが多く、現在「ケンゾー(KENZO)」のアーティスティック ディレクターを務めているNIGO®さんも寝室に飾っていました。
ヴィンテージポスターは主に映画や音楽関係に強い古着屋さんやポスター専門店で取り扱われます。僕もそうですが、ポスターを集めている古着屋のオーナーさんって実は結構いて、自分のコレクションをお店で販売していたりするので、今度古着屋さんに行ったら好きなミュージシャンや映画のポスターが置いていないか気にしてみてください。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭