【令和のマストバイヴィンテージ Vol.36】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.36】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.36 リーバイス アクションスラックス編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第36回は「リーバイス アクションスラックス」編。

「デニムのリーバイス」が打ち出した高機能スラックス

 リーバイスはデニムジーンズの代名詞と言えるブランドですが、今回ピックアップしたのはデニムでなくアクションスラックス(ACTION SLACKS)というパンツです。「リーバイスがスラックス?」と意外に思う人もいるかもしれませんが、このアイテムが登場したのは1971年。50年以上の歴史を持つアイテムなんです。

 実はリーバイス、それよりも前の1963年からスタプレ(STA-PREST)というスラックスタイプのパンツを展開していました。スタプレは、クリース(中央の折り目)が洗濯しても取れないという、当時革新的だった技術を取り入れたアイテムでした。つまり、それまでのスラックスには必要不可欠だったアイロンがけが不要になったということ。当時のスタプレの広告では「Never Needs Ironing!(アイロンがけ不要!)」と、その利便性が強くアピールされました。

 1960年代のアメリカでは、第二次世界大戦後の経済成長によって中産階級が拡大し、消費ブームが大きな盛り上がりを見せていました。人々はより快適で便利な生活様式を求めるようになり、手入れが簡単でいつでもきちんとした印象を保てる衣服の需要が高まっていました。その頃、化学繊維の技術開発が進んだこともあり、リーバイス以外にも「リー(Lee)」や「ラングラー(Wrangler)」などのジーンズブランドや、シャツメーカーの「ヴァンヒューゼン(Van Heusen)」など、あらゆるブランドがイージーケアのアイテムを打ち出していたのです。

 スタプレの後継モデルと言えるアクションスラックスも、アイロンがけが不要なことが最大の特徴です。ポリエステル素材が用いられているので、ストレッチ性があって軽くて動きやすく、洗濯も気軽にできるという、高い機能性が魅力。穿いていてとてもラクチンなので、僕もついつい着用することが多くなってしまいます。真冬だと少し寒いこともありますが、それ以外の季節では非常に快適に着用できます。

 スタプレはポケットや縫製などがジーンズに近いカジュアルな仕様ですが、アクションスラックスは一般的なスラックスとほぼ同じ仕様でキレイ目な印象に仕上がっています。つまり、スタプレをより上品にアレンジしたのが、アクションスラックスと言えるでしょう。こちらのグレーは1990年代終盤〜2000年代初頭のアクションスラックスですが、普通のスラックスにしか見えないですよね。

カジュアルにもキレイ目にも◎、ヴィンテージ入門にオススメ

 1960〜70年代を代表するヒッピーカルチャーの影響を受けてか、スタプレはややフレアがかったシルエットのものが多い印象ですが、アクションスラックスはややゆとりのあるストレートシルエットが主流。古い年代のアイテムでもモダンに着用できるのがポイントです。

 一方、ヴィンテージならではの良さが感じられるのも、アクションスラックスの魅力。こちらの1970年代の個体が良い例ですが、1970〜80年代の古いアクションスラックスには、それ以降にはあまりないアンニュイな色合いのものが少なくありません。定番カラーであるグレーも、古いアイテムはやや青みがかかっていたりするので、年代によって違いが楽しめるんです。

 これだけ魅力が詰まったアイテムですが、お手頃価格で手に入るのもアクションスラックスの特徴。1万円以下でも充分入手可能です。カジュアルにもキレイ目にも合わせられる万能アイテムなので、ヴィンテージの入門アイテムとしてもオススメですよ。

vol.36 リーバイス アクションスラックス編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第36回は「リーバイス アクションスラックス」編。

「デニムのリーバイス」が打ち出した高機能スラックス

 リーバイスはデニムジーンズの代名詞と言えるブランドですが、今回ピックアップしたのはデニムでなくアクションスラックス(ACTION SLACKS)というパンツです。「リーバイスがスラックス?」と意外に思う人もいるかもしれませんが、このアイテムが登場したのは1971年。50年以上の歴史を持つアイテムなんです。

 実はリーバイス、それよりも前の1963年からスタプレ(STA-PREST)というスラックスタイプのパンツを展開していました。スタプレは、クリース(中央の折り目)が洗濯しても取れないという、当時革新的だった技術を取り入れたアイテムでした。つまり、それまでのスラックスには必要不可欠だったアイロンがけが不要になったということ。当時のスタプレの広告では「Never Needs Ironing!(アイロンがけ不要!)」と、その利便性が強くアピールされました。

 1960年代のアメリカでは、第二次世界大戦後の経済成長によって中産階級が拡大し、消費ブームが大きな盛り上がりを見せていました。人々はより快適で便利な生活様式を求めるようになり、手入れが簡単でいつでもきちんとした印象を保てる衣服の需要が高まっていました。その頃、化学繊維の技術開発が進んだこともあり、リーバイス以外にも「リー(Lee)」や「ラングラー(Wrangler)」などのジーンズブランドや、シャツメーカーの「ヴァンヒューゼン(Van Heusen)」など、あらゆるブランドがイージーケアのアイテムを打ち出していたのです。

 スタプレの後継モデルと言えるアクションスラックスも、アイロンがけが不要なことが最大の特徴です。ポリエステル素材が用いられているので、ストレッチ性があって軽くて動きやすく、洗濯も気軽にできるという、高い機能性が魅力。穿いていてとてもラクチンなので、僕もついつい着用することが多くなってしまいます。真冬だと少し寒いこともありますが、それ以外の季節では非常に快適に着用できます。

 スタプレはポケットや縫製などがジーンズに近いカジュアルな仕様ですが、アクションスラックスは一般的なスラックスとほぼ同じ仕様でキレイ目な印象に仕上がっています。つまり、スタプレをより上品にアレンジしたのが、アクションスラックスと言えるでしょう。こちらのグレーは1990年代終盤〜2000年代初頭のアクションスラックスですが、普通のスラックスにしか見えないですよね。

カジュアルにもキレイ目にも◎、ヴィンテージ入門にオススメ

 1960〜70年代を代表するヒッピーカルチャーの影響を受けてか、スタプレはややフレアがかったシルエットのものが多い印象ですが、アクションスラックスはややゆとりのあるストレートシルエットが主流。古い年代のアイテムでもモダンに着用できるのがポイントです。

 一方、ヴィンテージならではの良さが感じられるのも、アクションスラックスの魅力。こちらの1970年代の個体が良い例ですが、1970〜80年代の古いアクションスラックスには、それ以降にはあまりないアンニュイな色合いのものが少なくありません。定番カラーであるグレーも、古いアイテムはやや青みがかかっていたりするので、年代によって違いが楽しめるんです。

 これだけ魅力が詰まったアイテムですが、お手頃価格で手に入るのもアクションスラックスの特徴。1万円以下でも充分入手可能です。カジュアルにもキレイ目にも合わせられる万能アイテムなので、ヴィンテージの入門アイテムとしてもオススメですよ。