【令和のマストバイヴィンテージ Vol.25】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
一番上は60年代、その他は70年代のアイテム
上から2番目は70年代、その他は60年代のアイテム
ブラックカラーは貴重かつ、着用しやすいので初心者にオススメ
こちらのアイテムは「ツードット」。テレヴィジョンカットが施されたデザインのおかげで立体感がありモードな印象
上のアイテムは張り合わせたクリームイエローとオフホワイトの生地を削り出して作られている
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.25】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.25 フレンチフレーム編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第25回はフレンチフレーム編。

通が唸る、「フレンチフレーム」の魅力とは?

 今回紹介するフレンチフレームとは、フランス製のヴィンテージアイウェアのこと。実はフランスは眼鏡大国なんです。そして、フレンチフレームはヴィンテージ通を唸らせる魅力をたくさん備えています。

 フレンチフレームの特徴は、なんと言ってもつくりの良さです。「良さ」と言っても、その基準は人によって千差万別。僕の場合、アクセサリーなどの小物は上質さが感じられるか否かが「良さ」の基準になります。これまで何度もご紹介してきたエルメスがその代表例ですね。着用するヴィンテージのウェアがラフな分、小物でバランスを取っているのかもしれません。  フレンチフレームの特徴は、なんと言ってもつくりの良さです。「良さ」と言っても、その基準は人によって千差万別。僕の場合、アクセサリーなどの小物は上質さが感じられるか否かが「良さ」の基準になります。これまで何度もご紹介してきたエルメスがその代表例ですね。着用するヴィンテージのウェアがラフな分、小物でバランスを取っているのかもしれません。

 前置きが長くなってしまいましたが、フレンチフレームは、エルメスジュエリーにも通ずる、職人の手仕事による上質なモノづくりが魅力です。

 フランスのアイウェアの黄金時代は1940年代。そのなかでも、「スリードット」と呼ばれるアイテムがフレンチフレームの最高峰だと言われています。アイウェアはおおまかに正面部分の「フロント」と、耳にかける「テンプル」の2つのパーツからできており、フロントとテンプルは丁番という金属のパーツで繋がれています。丁番には色々な種類があるのですが、そのなかのひとつであるカシメ丁番というものを使うと、フロントの両端にピンが露出するんです。スリードットは、その露出したピンが3つあるアイテムのこと。この手法でサングラスをつくるのには、熟練した職人の技術が必要です。つまり、スリードットは職人による手作りのアイテムの証拠、という訳なんです(とはいえ、最近は飾りでスリードットを付けている大量生産品もあるので、ヴィンテージ品の購入は信頼の置けるお店をオススメします)。あくまでも僕の印象ですが、こういったディティールが細かいアイテムを製造する技術は、アメリカよりもユーロのほうが高いように感じますね。

 また、フレンチフレームの魅力を語る上で、素材の話は欠かせません。フレンチフレームには主に、セルロイド素材が用いられています。ニトロセルロースと樟脳(しょうのう)を主原料とするセルロイドが、世界初のプラスチックとして誕生したのは19世紀のこと。当時、ビリヤードのボールには象牙が使われていましたが、その代替品として開発されたのがセルロイドです。その後、食器やおもちゃ、写真フィルムなど、多彩な用途に使われるようになりますが、20世紀半ばに高い可燃性が問題となり、世界中で排斥運動が広がりました。石油系プラスチックが台頭し始めたことも重なり、セルロイドは徐々に使われる機会が少なくなってしまったんです。しかし、セルロイドには石油系プラスチックでは表現できない質感や光沢感があり、触り心地も良いので、今も高級アイウェアにはしばしば用いられています。そしてヴィンテージのセルロイド素材には、昔の力織機で織られたヴィンテージデニムのような、現行の素材ではなかなか味わえない“アジ”があるんです。

稀代のロックスターが愛した「オーバルキャット」

 フレンチフレームにはたくさんのフォルム、デザインのアイテムがありますが、今回は1960年代のアイテムを中心に、大きな楕円形が特徴のオーバルキャットというタイプをピックアップしました。この形のサングラスを見て、思い浮かぶ有名人はいませんか?そう、ロックバンド ニルヴァーナのカート・コバーン(Kurt Cobain)です。カートが実際に着用していたのはアメリカのブランドのアイテムだそうですが、オーバルキャットのデザインの源流はフレンチフレームだ、という説もあります。つくりも質感も良いフレンチフレームで、アメリカのロックスター カート・コバーンを気取るのも、なかなか洒落ているのではないでしょうか。

 今回紹介したフレンチフレームは全て、神戸と東京にお店を構えるヴィンテージアイウェアショップ「スピークイージー(SPEAKEASY)」の山村将史オーナーからお借りしました。スピークイージーはヴィンテージだけではなく、良質なオリジナルも多数展開しています。ヴィンテージのアイウェアが気になる方は、是非チェックしてみてください。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭

vol.25 フレンチフレーム編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第25回はフレンチフレーム編。

一番上は60年代、その他は70年代のアイテム

通が唸る、「フレンチフレーム」の魅力とは?

 今回紹介するフレンチフレームとは、フランス製のヴィンテージアイウェアのこと。実はフランスは眼鏡大国なんです。そして、フレンチフレームはヴィンテージ通を唸らせる魅力をたくさん備えています。

 フレンチフレームの特徴は、なんと言ってもつくりの良さです。「良さ」と言っても、その基準は人によって千差万別。僕の場合、アクセサリーなどの小物は上質さが感じられるか否かが「良さ」の基準になります。これまで何度もご紹介してきたエルメスがその代表例ですね。着用するヴィンテージのウェアがラフな分、小物でバランスを取っているのかもしれません。  フレンチフレームの特徴は、なんと言ってもつくりの良さです。「良さ」と言っても、その基準は人によって千差万別。僕の場合、アクセサリーなどの小物は上質さが感じられるか否かが「良さ」の基準になります。これまで何度もご紹介してきたエルメスがその代表例ですね。着用するヴィンテージのウェアがラフな分、小物でバランスを取っているのかもしれません。

 前置きが長くなってしまいましたが、フレンチフレームは、エルメスジュエリーにも通ずる、職人の手仕事による上質なモノづくりが魅力です。

 フランスのアイウェアの黄金時代は1940年代。そのなかでも、「スリードット」と呼ばれるアイテムがフレンチフレームの最高峰だと言われています。アイウェアはおおまかに正面部分の「フロント」と、耳にかける「テンプル」の2つのパーツからできており、フロントとテンプルは丁番という金属のパーツで繋がれています。丁番には色々な種類があるのですが、そのなかのひとつであるカシメ丁番というものを使うと、フロントの両端にピンが露出するんです。スリードットは、その露出したピンが3つあるアイテムのこと。この手法でサングラスをつくるのには、熟練した職人の技術が必要です。つまり、スリードットは職人による手作りのアイテムの証拠、という訳なんです(とはいえ、最近は飾りでスリードットを付けている大量生産品もあるので、ヴィンテージ品の購入は信頼の置けるお店をオススメします)。あくまでも僕の印象ですが、こういったディティールが細かいアイテムを製造する技術は、アメリカよりもユーロのほうが高いように感じますね。

 また、フレンチフレームの魅力を語る上で、素材の話は欠かせません。フレンチフレームには主に、セルロイド素材が用いられています。ニトロセルロースと樟脳(しょうのう)を主原料とするセルロイドが、世界初のプラスチックとして誕生したのは19世紀のこと。当時、ビリヤードのボールには象牙が使われていましたが、その代替品として開発されたのがセルロイドです。その後、食器やおもちゃ、写真フィルムなど、多彩な用途に使われるようになりますが、20世紀半ばに高い可燃性が問題となり、世界中で排斥運動が広がりました。石油系プラスチックが台頭し始めたことも重なり、セルロイドは徐々に使われる機会が少なくなってしまったんです。しかし、セルロイドには石油系プラスチックでは表現できない質感や光沢感があり、触り心地も良いので、今も高級アイウェアにはしばしば用いられています。そしてヴィンテージのセルロイド素材には、昔の力織機で織られたヴィンテージデニムのような、現行の素材ではなかなか味わえない“アジ”があるんです。

上から2番目は70年代、その他は60年代のアイテム

稀代のロックスターが愛した「オーバルキャット」

 フレンチフレームにはたくさんのフォルム、デザインのアイテムがありますが、今回は1960年代のアイテムを中心に、大きな楕円形が特徴のオーバルキャットというタイプをピックアップしました。この形のサングラスを見て、思い浮かぶ有名人はいませんか?そう、ロックバンド ニルヴァーナのカート・コバーン(Kurt Cobain)です。カートが実際に着用していたのはアメリカのブランドのアイテムだそうですが、オーバルキャットのデザインの源流はフレンチフレームだ、という説もあります。つくりも質感も良いフレンチフレームで、アメリカのロックスター カート・コバーンを気取るのも、なかなか洒落ているのではないでしょうか。

 今回紹介したフレンチフレームは全て、神戸と東京にお店を構えるヴィンテージアイウェアショップ「スピークイージー(SPEAKEASY)」の山村将史オーナーからお借りしました。スピークイージーはヴィンテージだけではなく、良質なオリジナルも多数展開しています。ヴィンテージのアイウェアが気になる方は、是非チェックしてみてください。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭