【令和のマストバイヴィンテージ Vol.20】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
グレンデシャンGM/PM
コマにHermès刻印
留め具にはゴールドが使われている
幻のグレンデシャン イエローゴールド
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
release date

【令和のマストバイヴィンテージ Vol.20】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
release date
by Naoaki Tobe

vol.20 エルメス グレンデシャン編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第20回は「エルメス(HERMÈS)」グレデシャン編。

ジュエリーを超えた芸術品、ヴィンテージエルメスの頂点

 これまで「令和のマストバイヴィンテージ」ではヘラクレス、アクロバット、クレッシェンド、アレアと、数多くのエルメスの名作ジュエリーを紹介してきましたが、今回のグレンデシャンはそんなヴィンテージエルメスジュエリーの頂点とも言えるほど稀有な存在です。ではなぜ、グレンデシャンが頂点なのか。一番の要因は希少性の高さです。これまで長年ヴィンテージエルメスジュエリーを扱ってきた僕ですら、目にするのは年間で数本程度。1988年に発表されましたが、おそらくかなり限られた期間しか製造されていません。他のヴィンテージエルメスジュエリーに比べ、市場に出回っている数が極端に少ないのが特徴です。

 少量しか製造されなかった理由は、その製造過程にあるのではないかと僕は推察しています。グレンデシャンは「穀物の種子」という意味。その名の通り、種が重なったようなデザインですが、このフォルムを生み出すため、機械を使わずに人間の手で曲げる、「アヴワン」と呼ばれる非常に手間のかかる職人技が用いられています。細かい部分をじっくりと見ると、グレンデシャンの凄さが更によくわかります。それぞれのパーツはもちろん全部繋がっているんですが、まるで一つ一つのパーツがバラバラになっているように見えますよね。こうした見え方になるよう作ることは非常に難易度が高いので、これはもう、ジュエリーを超えた芸術品の域だと僕は考えています。

 グレンデシャンはPMとGMの2サイズ展開。小さい方のPMはアクロバットに雰囲気が似てますね。アクロバットももちろん名作なんですが、グレンデシャンは「頂点」なだけあって、ディティールにも相当なこだわりが見られます。それが特に伝わってくるのが留め具の部分。よく見ると、一部のパーツにゴールドが用いられているんです。なぜ、このようにほとんど見えない部分にゴールドが用いられているのでしょうか。色々調べた結果、強度を高めるためにゴールドを配合しているのではないか、という僕なりの答えに辿り着きました。金属は、純度を下げたほうが固くなるので、シルバーにゴールドを混ぜて、この留め金部分をつくったのではないか、というのが僕の推論です。

「幻」レベルの希少性、ゴールドグレンデシャン

 今回はスペシャル中のスペシャルなアイテムも紹介しましょう。グレンデシャンのゴールドです。元々数が少ないグレンデシャンですが、このゴールドは上顧客のみが手にすることを許されたオーダーメイド。最早「幻」と言っても過言ではありません。

 高い希少性故に、グレンデシャンのシルバーの相場はPM、GMともに700万円オーバー。それでも僕のお店では、入荷したらすぐに旅立ってしまうほどの人気です。ゴールドに至ってはもう、お金では解決できないくらいの存在です。今回、こうしてシルバーとゴールドのグレンデシャンを並べて写真に収めることができたのは奇跡だと思います。

 実はこのグレンデシャンは、出会ったときにヴィンテージエルメスを自分の仕事にしてその魅力を伝えようと決めたくらい、僕にとって思い入れの深いモデルです。価格ばかりがひとり歩きしてしまいがちですが、グレンデシャンの素晴らしさはやはりそのデザインの完成度の高さにあると思います。シンプルで付けやすいのに、存在感がある。誰が見ても素敵だと思えるデザインではないでしょうか。エルメスのブレスレットには太いものが多いんですが、グレンデシャンは細身なので時計と重ね付けしてもOK。その素晴らしさ故に、数多くのブランドがサンプリングしています。誰もが気軽に買えるものではありませんが、知識として知っておいて損はないと思います。

vol.20 エルメス グレンデシャン編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第20回は「エルメス(HERMÈS)」グレデシャン編。

コマにHermès刻印

ジュエリーを超えた芸術品、ヴィンテージエルメスの頂点

 これまで「令和のマストバイヴィンテージ」ではヘラクレス、アクロバット、クレッシェンド、アレアと、数多くのエルメスの名作ジュエリーを紹介してきましたが、今回のグレンデシャンはそんなヴィンテージエルメスジュエリーの頂点とも言えるほど稀有な存在です。ではなぜ、グレンデシャンが頂点なのか。一番の要因は希少性の高さです。これまで長年ヴィンテージエルメスジュエリーを扱ってきた僕ですら、目にするのは年間で数本程度。1988年に発表されましたが、おそらくかなり限られた期間しか製造されていません。他のヴィンテージエルメスジュエリーに比べ、市場に出回っている数が極端に少ないのが特徴です。

 少量しか製造されなかった理由は、その製造過程にあるのではないかと僕は推察しています。グレンデシャンは「穀物の種子」という意味。その名の通り、種が重なったようなデザインですが、このフォルムを生み出すため、機械を使わずに人間の手で曲げる、「アヴワン」と呼ばれる非常に手間のかかる職人技が用いられています。細かい部分をじっくりと見ると、グレンデシャンの凄さが更によくわかります。それぞれのパーツはもちろん全部繋がっているんですが、まるで一つ一つのパーツがバラバラになっているように見えますよね。こうした見え方になるよう作ることは非常に難易度が高いので、これはもう、ジュエリーを超えた芸術品の域だと僕は考えています。

 グレンデシャンはPMとGMの2サイズ展開。小さい方のPMはアクロバットに雰囲気が似てますね。アクロバットももちろん名作なんですが、グレンデシャンは「頂点」なだけあって、ディティールにも相当なこだわりが見られます。それが特に伝わってくるのが留め具の部分。よく見ると、一部のパーツにゴールドが用いられているんです。なぜ、このようにほとんど見えない部分にゴールドが用いられているのでしょうか。色々調べた結果、強度を高めるためにゴールドを配合しているのではないか、という僕なりの答えに辿り着きました。金属は、純度を下げたほうが固くなるので、シルバーにゴールドを混ぜて、この留め金部分をつくったのではないか、というのが僕の推論です。

「幻」レベルの希少性、ゴールドグレンデシャン

 今回はスペシャル中のスペシャルなアイテムも紹介しましょう。グレンデシャンのゴールドです。元々数が少ないグレンデシャンですが、このゴールドは上顧客のみが手にすることを許されたオーダーメイド。最早「幻」と言っても過言ではありません。

 高い希少性故に、グレンデシャンのシルバーの相場はPM、GMともに700万円オーバー。それでも僕のお店では、入荷したらすぐに旅立ってしまうほどの人気です。ゴールドに至ってはもう、お金では解決できないくらいの存在です。今回、こうしてシルバーとゴールドのグレンデシャンを並べて写真に収めることができたのは奇跡だと思います。

 実はこのグレンデシャンは、出会ったときにヴィンテージエルメスを自分の仕事にしてその魅力を伝えようと決めたくらい、僕にとって思い入れの深いモデルです。価格ばかりがひとり歩きしてしまいがちですが、グレンデシャンの素晴らしさはやはりそのデザインの完成度の高さにあると思います。シンプルで付けやすいのに、存在感がある。誰が見ても素敵だと思えるデザインではないでしょうか。エルメスのブレスレットには太いものが多いんですが、グレンデシャンは細身なので時計と重ね付けしてもOK。その素晴らしさ故に、数多くのブランドがサンプリングしています。誰もが気軽に買えるものではありませんが、知識として知っておいて損はないと思います。

留め具にはゴールドが使われている