【令和のマストバイヴィンテージ Vol.2】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
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人気の高いXLサイズは貴重 Imaged by FASHIONSNAP
ボディのカラーは着やすいホワイトとブラックの人気が高い Imaged by FASHIONSNAP
Tシャツ裏面 Imaged by FASHIONSNAP
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VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.2】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第2回はキース・ヘリング(Keith Haring)のアートTシャツ編。

アートTシャツでヴィンテージをファッションとして楽しんで!

 近年、ヴィンテージの中でもTシャツの人気が一際高まっています。特にメジャーなのがバンドTシャツ。有名なものだと、「ニルヴァーナ(NIRVANA)」がありますね。ただ、バンドTシャツを着る場合、そのバンドの曲をちゃんと聴き込んでいないといけない、みたいな固定概念があるようで、お客さんに「自分がこのTシャツを着ても大丈夫ですか?」なんてことをよく訊ねられるんです。

 僕はファッションとして、Tシャツのグラフィックを楽しんでもらいたいと思っています。そういう観点でお勧めしたいのが、今回紹介するアートTシャツ。

 これは、有名なアメリカのアーティスト キース・ヘリングのTシャツです。1983年にイギリスで開催されたイベントで、キースがダンサー&振付師のビル・T・ジョーンズ(Bill T. Jones)の身体に直接ペイントし、写真家 ツェン・クワン・チー(Tseng Kwong Chi)が撮影した作品を大きくプリントしており、バックプリントの下側には3人の名前と「ロンドン、イングランド、1983」の文字が記されています。

 アートTシャツは美術館やスーベニアショップ、イベントなどで売られることが多いのですが、これはキース・ヘリングがアートをより多くの人に届けたいという考えで展開していた「ポップショップ(POP SHOP)」というお店のタグが付いています。

 ヴィンテージTシャツを見極める重要なポイントがステッチです。これは袖と裾両方が一本のステッチで縫われているシングルステッチなので、1990年代前半のアイテムだと推察できます。

 1990年代のヴィンテージTシャツはコットン100%で生地がしっかりしているのがポイント。「フルーツ・オブ・ザ・ルーム(FRUIT OF THE LOOM)」は個体により違いはあるものの着丈が少し長めとか、「ジャイアント(giant)」は身幅がたっぷりあって着丈が短いとか、メーカーごとに特徴が色々あります。1980年代のTシャツはコットン50%、ポリエステル50%のものが多いのですが、それだと生地がちょっと痩せてしまうし、シルエットもタイトなので着る人を選ぶ傾向がありますね。

LGBTQ+活動先駆者たちからのクールなメッセージ

 僕がこのTシャツで気に入っているのは、左右対称のこのデザイン。それがボディに大きくプリントされているところがシンプルに格好良いと思いました。人間のパワーを感じます。

 キースは自身がHIV感染者だったこともあり、エイズ撲滅などの社会運動を積極的に行っていたアーティストです。また、ビル・T・ジョーンズもパートナーをHIVで亡くしたため、難病患者と対話するワークショップなどを開催していたらしく、ふたりとも今で言うところのLGBTQ+活動の先駆け的存在でした。そういったポイントも非常にクールだと思います。

 今ではコンプライアンス的な問題で、こういった裸の写真をプリントしたTシャツを販売することは難しいかもしれません。表現の規制が緩かった時代の自由なアートを楽しめるというのも、ヴィンテージTシャツの魅力と言えますね。

 今回紹介したキースのTシャツは、サイズにもよりますが大体20〜30万円が相場でしょうか。有名なバンドTシャツはもう信じられないくらい値段が高騰してしまっていますが、アートTシャツはダリやモネ、アンディ・ウォーホルなどの有名どころでも、まだ買いやすい価格のものが残っています。とはいえ、徐々に値段は上がってきているので、今が狙いどきでしょうね。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭

vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第2回はキース・ヘリング(Keith Haring)のアートTシャツ編。

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アートTシャツでヴィンテージをファッションとして楽しんで!

 近年、ヴィンテージの中でもTシャツの人気が一際高まっています。特にメジャーなのがバンドTシャツ。有名なものだと、「ニルヴァーナ(NIRVANA)」がありますね。ただ、バンドTシャツを着る場合、そのバンドの曲をちゃんと聴き込んでいないといけない、みたいな固定概念があるようで、お客さんに「自分がこのTシャツを着ても大丈夫ですか?」なんてことをよく訊ねられるんです。

 僕はファッションとして、Tシャツのグラフィックを楽しんでもらいたいと思っています。そういう観点でお勧めしたいのが、今回紹介するアートTシャツ。

 これは、有名なアメリカのアーティスト キース・ヘリングのTシャツです。1983年にイギリスで開催されたイベントで、キースがダンサー&振付師のビル・T・ジョーンズ(Bill T. Jones)の身体に直接ペイントし、写真家 ツェン・クワン・チー(Tseng Kwong Chi)が撮影した作品を大きくプリントしており、バックプリントの下側には3人の名前と「ロンドン、イングランド、1983」の文字が記されています。

 アートTシャツは美術館やスーベニアショップ、イベントなどで売られることが多いのですが、これはキース・ヘリングがアートをより多くの人に届けたいという考えで展開していた「ポップショップ(POP SHOP)」というお店のタグが付いています。

人気の高いXLサイズは貴重 Imaged by FASHIONSNAP

 ヴィンテージTシャツを見極める重要なポイントがステッチです。これは袖と裾両方が一本のステッチで縫われているシングルステッチなので、1990年代前半のアイテムだと推察できます。

 1990年代のヴィンテージTシャツはコットン100%で生地がしっかりしているのがポイント。「フルーツ・オブ・ザ・ルーム(FRUIT OF THE LOOM)」は個体により違いはあるものの着丈が少し長めとか、「ジャイアント(giant)」は身幅がたっぷりあって着丈が短いとか、メーカーごとに特徴が色々あります。1980年代のTシャツはコットン50%、ポリエステル50%のものが多いのですが、それだと生地がちょっと痩せてしまうし、シルエットもタイトなので着る人を選ぶ傾向がありますね。

ボディのカラーは着やすいホワイトとブラックの人気が高い Imaged by FASHIONSNAP

LGBTQ+活動先駆者たちからのクールなメッセージ

 僕がこのTシャツで気に入っているのは、左右対称のこのデザイン。それがボディに大きくプリントされているところがシンプルに格好良いと思いました。人間のパワーを感じます。

 キースは自身がHIV感染者だったこともあり、エイズ撲滅などの社会運動を積極的に行っていたアーティストです。また、ビル・T・ジョーンズもパートナーをHIVで亡くしたため、難病患者と対話するワークショップなどを開催していたらしく、ふたりとも今で言うところのLGBTQ+活動の先駆け的存在でした。そういったポイントも非常にクールだと思います。

 今ではコンプライアンス的な問題で、こういった裸の写真をプリントしたTシャツを販売することは難しいかもしれません。表現の規制が緩かった時代の自由なアートを楽しめるというのも、ヴィンテージTシャツの魅力と言えますね。

 今回紹介したキースのTシャツは、サイズにもよりますが大体20〜30万円が相場でしょうか。有名なバンドTシャツはもう信じられないくらい値段が高騰してしまっていますが、アートTシャツはダリやモネ、アンディ・ウォーホルなどの有名どころでも、まだ買いやすい価格のものが残っています。とはいえ、徐々に値段は上がってきているので、今が狙いどきでしょうね。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭

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