【令和のマストバイヴィンテージ Vol.17】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
アレアは3サイズ展開で、上からPM、GM、TGM(別名アレアジュアン)と呼ばれる
トグル式の留め金
サイズにより様々なコマに刻印が施されている
エルメス アレア PM/GM/TGM
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
release date

【令和のマストバイヴィンテージ Vol.17】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
release date
by Naoaki Tobe

vol.17 エルメス アレア編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第17回は「エルメス(HERMÈS)」 アレア編。

エルメスジュエリー「名作揃いのスペシャルピース」

 これまでこの連載では、ヘラクレス、アクロバット、クレッシェンドと、3つのエルメスの名作ジュエリーを紹介してきました。いずれもエルメスを代表する人気モデルですが、今回紹介するアレアも負けず劣らずのスペシャルなモデルです。

 アレアがどう特別なのかは、アイテムを一目見たらはっきりと分かります。アレアとは「偶然」や「予測不能」といった意味のフランス語ですが、その言葉通り、コマの形がひとつずつ異なっているんです。しかも、それぞれのコマにはサランボ、シェーヌダンクル、ダリウス、ブックルセリエなどの、それぞれ単体で名作と呼ばれるエルメスジュエリーのデザインが採用されています。コマが一つ一つ違うデザインが採用されたのは、現段階ではアレアが最初で最後。つまり、アレアは「最初で最後のエルメスベスト版」とも言える、稀有な逸品なんです。

 デザインを細かく見ていくと、サランボ、シェーヌダンクル、ダリウス、ブックルセリエなどがそれぞれ違和感なく並ぶよう、順番に相当気が配られていることが分かります。よく見るとわかりますがサイズごとにコマが並んでいる順番も違っているんです。このデザインに行き着くまで度重なるデザイン会議があったのではないか、なんて想像までしてしまいますね(笑)。

 そんなアレアをデザインしたのは、クレッシェンドの記事でも紹介した、数々の名作ジュエリーを生み出したピエール・アルディ(Pierre Hardy)。1980年代までのエルメスのジュエリーは、クラシカルな雰囲気のデザインが主流でしたが、彼がデザインを手掛けるようになってからは、デザインが一新されてモダンな印象になりました。

近年エルメスのジュエリーが高騰している理由

 エルメスのジュエリーは、モデルによって販売期間が違います。1シーズンしか販売しなかったものや、数年に渡って販売が続けられたものなど様々ですが、アレアは後者。発売が開始されたのは2006年ですが、2021年まで購入可能だったという情報を耳にしたことがあります。

 エルメスのジュエリーの人気が近年高まっている理由を、僕はよくお客様から聞かれるのですが、最も大きな要素として「エルメスがジュエリーの生産数を絞ったから」ということが挙げられると思います。ではなぜ、エルメスは生産数を絞ったのか。あくまでも僕の推測ですが、エルメスの戦略の一環で、ブランド価値を高める為にそういった戦略を取っている、という可能性はあるんじゃないかと思っています。また、エルメスのジュエリーを作っていた工房が閉鎖した、という噂も聞いたことがあるので、生産背景の要因もあるかもしれません。いずれにせよ、アレアは約15年と長い期間販売されていたにも関わらず、生産数はごく僅かだったので、現在市場に出回っている個体の数は限られており、希少性の高さに比例して人気も高まっています。

 ちなみに、アレアは2020年頃まで特別な顧客に限りスペシャルオーダーが可能だったそうで、シルバーとゴールドのコンビデザインのものも存在しているそうです。僕も実物を手にしたことがないくらいの超貴重なアイテム。値段を付けるとすると、500万円は下らないでしょう。

 シルバータイプの気になるお値段ですが、一番大きなTGMは約100万円からと、最もお手頃な価格。次に大きいGMと、一番小さいPMはそれぞれ約200万円から、というのが最近の相場です。

 近年のエルメスのジュエリーにも良さがあるのですが、僕個人としてはやはりピエール・アルディが手掛けていた2010年頃までのアイテムに特別な思い入れがあります。なかでも、このアレアは唯一無二のスペシャルなモデル。興味がある方は、是非挑戦してみてください。

vol.17 エルメス アレア編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第17回は「エルメス(HERMÈS)」 アレア編。

トグル式の留め金

エルメスジュエリー「名作揃いのスペシャルピース」

 これまでこの連載では、ヘラクレス、アクロバット、クレッシェンドと、3つのエルメスの名作ジュエリーを紹介してきました。いずれもエルメスを代表する人気モデルですが、今回紹介するアレアも負けず劣らずのスペシャルなモデルです。

 アレアがどう特別なのかは、アイテムを一目見たらはっきりと分かります。アレアとは「偶然」や「予測不能」といった意味のフランス語ですが、その言葉通り、コマの形がひとつずつ異なっているんです。しかも、それぞれのコマにはサランボ、シェーヌダンクル、ダリウス、ブックルセリエなどの、それぞれ単体で名作と呼ばれるエルメスジュエリーのデザインが採用されています。コマが一つ一つ違うデザインが採用されたのは、現段階ではアレアが最初で最後。つまり、アレアは「最初で最後のエルメスベスト版」とも言える、稀有な逸品なんです。

 デザインを細かく見ていくと、サランボ、シェーヌダンクル、ダリウス、ブックルセリエなどがそれぞれ違和感なく並ぶよう、順番に相当気が配られていることが分かります。よく見るとわかりますがサイズごとにコマが並んでいる順番も違っているんです。このデザインに行き着くまで度重なるデザイン会議があったのではないか、なんて想像までしてしまいますね(笑)。

 そんなアレアをデザインしたのは、クレッシェンドの記事でも紹介した、数々の名作ジュエリーを生み出したピエール・アルディ(Pierre Hardy)。1980年代までのエルメスのジュエリーは、クラシカルな雰囲気のデザインが主流でしたが、彼がデザインを手掛けるようになってからは、デザインが一新されてモダンな印象になりました。

近年エルメスのジュエリーが高騰している理由

 エルメスのジュエリーは、モデルによって販売期間が違います。1シーズンしか販売しなかったものや、数年に渡って販売が続けられたものなど様々ですが、アレアは後者。発売が開始されたのは2006年ですが、2021年まで購入可能だったという情報を耳にしたことがあります。

 エルメスのジュエリーの人気が近年高まっている理由を、僕はよくお客様から聞かれるのですが、最も大きな要素として「エルメスがジュエリーの生産数を絞ったから」ということが挙げられると思います。ではなぜ、エルメスは生産数を絞ったのか。あくまでも僕の推測ですが、エルメスの戦略の一環で、ブランド価値を高める為にそういった戦略を取っている、という可能性はあるんじゃないかと思っています。また、エルメスのジュエリーを作っていた工房が閉鎖した、という噂も聞いたことがあるので、生産背景の要因もあるかもしれません。いずれにせよ、アレアは約15年と長い期間販売されていたにも関わらず、生産数はごく僅かだったので、現在市場に出回っている個体の数は限られており、希少性の高さに比例して人気も高まっています。

 ちなみに、アレアは2020年頃まで特別な顧客に限りスペシャルオーダーが可能だったそうで、シルバーとゴールドのコンビデザインのものも存在しているそうです。僕も実物を手にしたことがないくらいの超貴重なアイテム。値段を付けるとすると、500万円は下らないでしょう。

 シルバータイプの気になるお値段ですが、一番大きなTGMは約100万円からと、最もお手頃な価格。次に大きいGMと、一番小さいPMはそれぞれ約200万円から、というのが最近の相場です。

 近年のエルメスのジュエリーにも良さがあるのですが、僕個人としてはやはりピエール・アルディが手掛けていた2010年頃までのアイテムに特別な思い入れがあります。なかでも、このアレアは唯一無二のスペシャルなモデル。興味がある方は、是非挑戦してみてください。

サイズにより様々なコマに刻印が施されている