【令和のマストバイヴィンテージ Vol.16】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
高円寺のヴィンテージショップ「RIYAN」オーナー蓬田氏私物
レッドやブルーは比較的ベーシックなカラー(ヴィンテージショップ「BOROMART」提供)
珍しい配色のアイテムは希少価値が高い
数あるオンブレチェックのなかでもブラック☓ホワイトは圧倒的人気で、価格も高め
ブレントはアメリカの百貨店やカタログ通販を展開していたモンゴメリーワードのプライベートブランド
タグが残っている貴重なデッドストック
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.16】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.16 オンブレチェックシャツ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。 第16回はオンブレチェックシャツ編。

カルチャーと繋がりの深いオンブレチェックシャツ、トレンドの変遷

 ヴィンテージを語る上で欠かせない要素の一つが、映画や音楽などのカルチャーです。好きな映画の俳優や、憧れのミュージシャンと同じ服を着てみたいと思った経験は、誰しもが持っているのではないでしょうか。かくいう僕も、これまで多くの映画や音楽に影響を受け、そこから様々なヴィンテージアイテムに出会ってきました。

 オンブレチェックシャツは、特にカルチャーと密接な関係にあるヴィンテージアイテム。今回ピックアップしたのは「タウンクラフト(TOWNCRAFT)」や「アロー(ARROW)」「ブレント(BRENT)」といった、当時アメリカで大量に流通していた庶民的なブランドのシャツです。

 オンブレチェックシャツはもともと、1950年代頃からアメリカで一般的に着られていた、カジュアルなアイテムでした。

 しかし1960年代以降、映画の中で不良やスケーターなど、ヤンチャな若者たちが着用するようになり、徐々にワルっぽいイメージが強くなっていきました。オンブレチェックは、グラデーションのような陰影のあるチェック柄を指します。ちょっとダークな雰囲気があり、それが登場人物たちのワルい印象を強調する役割を担っていたのかもしれません。

 そんなオンブレチェックのイメージを決定づけたのが、1987年に結成されたアメリカのロックバンド「ニルヴァーナ(NIRAVANA)」のフロントマン、カート・コバーン(Kurt Cobain)です。カート・コバーンが着用していたのは、モヘアニットとボロボロのジーンズ、そしてオンブレチェックシャツ。これらは当時のアメリカ西海岸の若者の一般的な普段着でしたが、ニルヴァーナの陰鬱で荒々しい音楽とマッチしたことで、彼のファッションは世界的に注目されるようになりました。その後、ファッション誌などで取り上げられる過程で、グランジ(grunge=薄汚れた、不潔な)と呼ばれるようになったんです。

 カート・コバーンは、後のファッション業界に多大な影響を与えました。2000年代、ふたりのカリスマ的なファッションデザイナーが、グランジの影響が色濃いスタイルを打ち出します。「ディオール オム(DIOR HOMME)」のエディ・スリマン(Hedi Slimane)と、「ナンバー ナイン(NUMBER (N)INE)」の宮下貴裕氏(現TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.デザイナー)です。デザイナーズブランドによってモダンなアレンジが施されたグランジアイテムが人気を集めたことで、2000年代以降オンブレチェックシャツは都会的な印象も併せ持つようになりました。

 元々はデイリーなカジュアルウェアだったオンブレチェックシャツですが、こうした変遷を経て、不良やスケーター、ロック、モードなど、様々なイメージを内包するアイテムになっていったんです。

オンブレチェックシャツは1950年代のアイテムがオススメ、その理由は?

 今回紹介するオンブレチェックシャツは、全て1950年代のアイテムですが、これには理由があります。オンブレチェックシャツはカジュアルシャツの定番として、いつの時代でも変わらず製造されているんですが、時代ごとに違った特徴があるんです。1960年代から70年代にかけて作られたアイテムは、襟が大きかったり、襟先が尖っていたりと、デザインに少し癖があるデザインが多め。また、1980年代以降になると、大きめのサイズが主流となり、ややストリート感が強くなります。こうした理由から、オンブレチェックシャツは1950〜60年代のアイテムが個人的にはオススメです。ちなみに、色、サイズにもよりますが、1950年代のオンブレチェックシャツの相場は5〜10万円以上、デッドストックや状態の良いものでは20万円を超えることもあります。

 1950年代というと、今から70年も前。かなり昔のアイテムになりますが、今回紹介したオンブレチェックシャツは、どれも古臭さが感じられないと思いませんか?これは、時代を超越した、普遍的な魅力を持っていることが理由だと考えています。おそらくこれからもずっと、ヴィンテージシャツの代表であり続けるであろうオンブレチェックシャツ。相場はずっと上昇傾向にあるので、気になる方は早めのチェックがオススメです。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭

vol.16 オンブレチェックシャツ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。 第16回はオンブレチェックシャツ編。

高円寺のヴィンテージショップ「RIYAN」オーナー蓬田氏私物

カルチャーと繋がりの深いオンブレチェックシャツ、トレンドの変遷

 ヴィンテージを語る上で欠かせない要素の一つが、映画や音楽などのカルチャーです。好きな映画の俳優や、憧れのミュージシャンと同じ服を着てみたいと思った経験は、誰しもが持っているのではないでしょうか。かくいう僕も、これまで多くの映画や音楽に影響を受け、そこから様々なヴィンテージアイテムに出会ってきました。

 オンブレチェックシャツは、特にカルチャーと密接な関係にあるヴィンテージアイテム。今回ピックアップしたのは「タウンクラフト(TOWNCRAFT)」や「アロー(ARROW)」「ブレント(BRENT)」といった、当時アメリカで大量に流通していた庶民的なブランドのシャツです。

 オンブレチェックシャツはもともと、1950年代頃からアメリカで一般的に着られていた、カジュアルなアイテムでした。

 しかし1960年代以降、映画の中で不良やスケーターなど、ヤンチャな若者たちが着用するようになり、徐々にワルっぽいイメージが強くなっていきました。オンブレチェックは、グラデーションのような陰影のあるチェック柄を指します。ちょっとダークな雰囲気があり、それが登場人物たちのワルい印象を強調する役割を担っていたのかもしれません。

 そんなオンブレチェックのイメージを決定づけたのが、1987年に結成されたアメリカのロックバンド「ニルヴァーナ(NIRAVANA)」のフロントマン、カート・コバーン(Kurt Cobain)です。カート・コバーンが着用していたのは、モヘアニットとボロボロのジーンズ、そしてオンブレチェックシャツ。これらは当時のアメリカ西海岸の若者の一般的な普段着でしたが、ニルヴァーナの陰鬱で荒々しい音楽とマッチしたことで、彼のファッションは世界的に注目されるようになりました。その後、ファッション誌などで取り上げられる過程で、グランジ(grunge=薄汚れた、不潔な)と呼ばれるようになったんです。

 カート・コバーンは、後のファッション業界に多大な影響を与えました。2000年代、ふたりのカリスマ的なファッションデザイナーが、グランジの影響が色濃いスタイルを打ち出します。「ディオール オム(DIOR HOMME)」のエディ・スリマン(Hedi Slimane)と、「ナンバー ナイン(NUMBER (N)INE)」の宮下貴裕氏(現TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.デザイナー)です。デザイナーズブランドによってモダンなアレンジが施されたグランジアイテムが人気を集めたことで、2000年代以降オンブレチェックシャツは都会的な印象も併せ持つようになりました。

 元々はデイリーなカジュアルウェアだったオンブレチェックシャツですが、こうした変遷を経て、不良やスケーター、ロック、モードなど、様々なイメージを内包するアイテムになっていったんです。

レッドやブルーは比較的ベーシックなカラー(ヴィンテージショップ「BOROMART」提供)

オンブレチェックシャツは1950年代のアイテムがオススメ、その理由は?

 今回紹介するオンブレチェックシャツは、全て1950年代のアイテムですが、これには理由があります。オンブレチェックシャツはカジュアルシャツの定番として、いつの時代でも変わらず製造されているんですが、時代ごとに違った特徴があるんです。1960年代から70年代にかけて作られたアイテムは、襟が大きかったり、襟先が尖っていたりと、デザインに少し癖があるデザインが多め。また、1980年代以降になると、大きめのサイズが主流となり、ややストリート感が強くなります。こうした理由から、オンブレチェックシャツは1950〜60年代のアイテムが個人的にはオススメです。ちなみに、色、サイズにもよりますが、1950年代のオンブレチェックシャツの相場は5〜10万円以上、デッドストックや状態の良いものでは20万円を超えることもあります。

 1950年代というと、今から70年も前。かなり昔のアイテムになりますが、今回紹介したオンブレチェックシャツは、どれも古臭さが感じられないと思いませんか?これは、時代を超越した、普遍的な魅力を持っていることが理由だと考えています。おそらくこれからもずっと、ヴィンテージシャツの代表であり続けるであろうオンブレチェックシャツ。相場はずっと上昇傾向にあるので、気になる方は早めのチェックがオススメです。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭

珍しい配色のアイテムは希少価値が高い