【令和のマストバイヴィンテージ Vol.13】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
「巨人タグ」と呼ばれるブランドタグ
ブラック☓ブラックには、ネイビーのステッチ、パープルのボタンが使われているところにも注目
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.13】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第12回は「マルタン マルジェラ(Martin Margiela)」のペンキデニムジャケット編。

ヴィンテージと縁の深い、アメリカのカタログ通販

 今回紹介するJ.クルーの祖業は、カタログ通販です。実はカタログ通販はアメリカのカルチャーを語る上で欠かせないキーワードで、ファッションにも大きな影響を及ぼしているので、軽く触れてみたいと思います。

 国土が広大なアメリカでは、カタログ通販が早くから発達していました。その代表格が、「シアーズ・ローバック(Sears Roebuck)」。19世紀末のアメリカでは人口の多くが農村に住んでおり、その交通手段は鉄道、もしくは馬車や馬でした。消費者は時間をかけて都市まで行くか、個人商店や行商人から高い値段で商品を買うしかなかったんです。ここに着目したシアーズ・ローバックは、カタログを郵送し、一括仕入れで安価に商品を提供するダイレクトマーケティングをスタート。結果的に大ヒットしたんです。生活雑貨だけではなく、家具や自動車、果ては住宅まで扱うようになったシアーズ・ローバックのカタログは「消費者の聖書」と呼ばれ、アメリカの消費文化の象徴とも言えるような存在になります。そして、そのシアーズ・ローバックが展開していた衣料品ブランドのひとつが、ヴィンテージ古着のブランドとしても人気が高い「シアーズ(Sears)」なんです。シアーズ以外にも、カタログ通販が出自のブランドは沢山あるので、もし興味があったら調べてみてくださいね。

 さて、J.クルーに話を戻しましょう。カタログ通販で人気を博した後、店舗販売、セレクトショップと次々と業態を変え、1990年代には日本にも上陸するなど、ビジネスを拡大していきます。そんなJ.クルーのアイテムの中でヴィンテージとしての評価が高いのが、今回紹介するツートーンアノラックパーカ。90年代に展開されていたアイテムで、フード周りの色がボディと切り替えられたツートーンデザインが特徴です。写真はグリーンとホワイトのツートーンですが、他に、オレンジ×ホワイトや、ブルー×ホワイト、シャンブレー×ホワイトなど、様々なバリエーションが存在します。

 中でも特に貴重なのが、このブラック×ブラック。「これではツートーンじゃなくてワントーンじゃないか」とツッコまれそうですが(笑)。僕はこれを、新潟の古着屋「バナナス(BANANAS)」さんで買わせてもらいました。

 このアイテムがヴィンテージとして評価されていることには、もちろん理由があります。僕が一番面白いと感じているのが首元のディテール。フロントジップの下に、大小2つのジップポケットが並ぶという、非常に面白い仕様になっています。フードの紐も良いアクセントになっています。

 袖口や裾のディテールもかなり凝っています。大衆向けのブランドにも関わらず、ここまで手間暇のかかるディティールが取り入れられていたのは、この時代ならではでしょうね。

 季節を問わず着られる薄手のコットン素材で、ざっくり羽織れるシルエット。カップルで共有するのもオススメです。

相場が確立されていないからこそJ.クルーが「狙い目」

 J.クルーは、この連載でこれまで紹介してきた他のアメリカブランド、例えば「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」や「リーバイス(Levi’s®)」などのように、どの古着屋でも見かけるほど流通量が多いブランドではありません。言い換えれば、現在のヴィンテージ市場でそれほど相場が確立されている訳ではない、「狙い目」のブランドなんです。

 最近は1990年代に発売された「ギャップ(GAP)」や「エルエルビーン(L.L. BEAN)」、「ランズエンド(LAND'S END)」などマス向けブランドのアイテムが「ネクストヴィンテージ」として人気を集め、相場が上がりつつありますが、J.クルーにはまだそれほど注目が集まっていないよう。このツートーンアノラックパーカも、相場は3万円程度(状態やカラーにより変動)です。

 1990年代のギャップがざっくりとしたシルエットや味わいのある素材感で評価を高めていますが、このツートーンアノラックパーカにも同じ空気感があるので、いつ人気が爆発するか分かりません。今回の記事がそのきっかけになれば嬉しいですね。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭

vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第12回は「マルタン マルジェラ(Martin Margiela)」のペンキデニムジャケット編。

ヴィンテージと縁の深い、アメリカのカタログ通販

 今回紹介するJ.クルーの祖業は、カタログ通販です。実はカタログ通販はアメリカのカルチャーを語る上で欠かせないキーワードで、ファッションにも大きな影響を及ぼしているので、軽く触れてみたいと思います。

 国土が広大なアメリカでは、カタログ通販が早くから発達していました。その代表格が、「シアーズ・ローバック(Sears Roebuck)」。19世紀末のアメリカでは人口の多くが農村に住んでおり、その交通手段は鉄道、もしくは馬車や馬でした。消費者は時間をかけて都市まで行くか、個人商店や行商人から高い値段で商品を買うしかなかったんです。ここに着目したシアーズ・ローバックは、カタログを郵送し、一括仕入れで安価に商品を提供するダイレクトマーケティングをスタート。結果的に大ヒットしたんです。生活雑貨だけではなく、家具や自動車、果ては住宅まで扱うようになったシアーズ・ローバックのカタログは「消費者の聖書」と呼ばれ、アメリカの消費文化の象徴とも言えるような存在になります。そして、そのシアーズ・ローバックが展開していた衣料品ブランドのひとつが、ヴィンテージ古着のブランドとしても人気が高い「シアーズ(Sears)」なんです。シアーズ以外にも、カタログ通販が出自のブランドは沢山あるので、もし興味があったら調べてみてくださいね。

 さて、J.クルーに話を戻しましょう。カタログ通販で人気を博した後、店舗販売、セレクトショップと次々と業態を変え、1990年代には日本にも上陸するなど、ビジネスを拡大していきます。そんなJ.クルーのアイテムの中でヴィンテージとしての評価が高いのが、今回紹介するツートーンアノラックパーカ。90年代に展開されていたアイテムで、フード周りの色がボディと切り替えられたツートーンデザインが特徴です。写真はグリーンとホワイトのツートーンですが、他に、オレンジ×ホワイトや、ブルー×ホワイト、シャンブレー×ホワイトなど、様々なバリエーションが存在します。

 中でも特に貴重なのが、このブラック×ブラック。「これではツートーンじゃなくてワントーンじゃないか」とツッコまれそうですが(笑)。僕はこれを、新潟の古着屋「バナナス(BANANAS)」さんで買わせてもらいました。

 このアイテムがヴィンテージとして評価されていることには、もちろん理由があります。僕が一番面白いと感じているのが首元のディテール。フロントジップの下に、大小2つのジップポケットが並ぶという、非常に面白い仕様になっています。フードの紐も良いアクセントになっています。

 袖口や裾のディテールもかなり凝っています。大衆向けのブランドにも関わらず、ここまで手間暇のかかるディティールが取り入れられていたのは、この時代ならではでしょうね。

 季節を問わず着られる薄手のコットン素材で、ざっくり羽織れるシルエット。カップルで共有するのもオススメです。

相場が確立されていないからこそJ.クルーが「狙い目」

 J.クルーは、この連載でこれまで紹介してきた他のアメリカブランド、例えば「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」や「リーバイス(Levi’s®)」などのように、どの古着屋でも見かけるほど流通量が多いブランドではありません。言い換えれば、現在のヴィンテージ市場でそれほど相場が確立されている訳ではない、「狙い目」のブランドなんです。

 最近は1990年代に発売された「ギャップ(GAP)」や「エルエルビーン(L.L. BEAN)」、「ランズエンド(LAND'S END)」などマス向けブランドのアイテムが「ネクストヴィンテージ」として人気を集め、相場が上がりつつありますが、J.クルーにはまだそれほど注目が集まっていないよう。このツートーンアノラックパーカも、相場は3万円程度(状態やカラーにより変動)です。

 1990年代のギャップがざっくりとしたシルエットや味わいのある素材感で評価を高めていますが、このツートーンアノラックパーカにも同じ空気感があるので、いつ人気が爆発するか分かりません。今回の記事がそのきっかけになれば嬉しいですね。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭