代表取締役 十倍直昭
2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
https://www.instagram.com/naoaki_tobe/【令和のマストバイヴィンテージ Vol.32】
by Naoaki Tobevol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第32回は「リーバイス(Levi’s®)」の「後染め」ブラックデニム編。
リーバイスのブラックデニム「先染め」と「後染め」、実はどっちも“先染め” 違いは?
ヴィンテージの歴史が始まって以来、圧倒的な人気を誇り続けてきたアイテムが、リーバイスのインディゴブルージーンズです。しかし、近年はその状況に変化が見られるようになってきました。これまで長年レギュラーアイテムとして扱われてきていた、ブラックデニムの注目度が急上昇しているんです。ブラックデニムは歴史が浅いという印象を持っている人もいるかもしれませんが、実は非常に長い歴史があるんです。ブラックデニムが開発されたのはいつ、誰なのかは定かではありませんが、リーバイスが1900年代からブラックデニムを展開しているという資料が確認されているので、少なくとも120年くらいの歴史があると言えます。とはいえ、バリエーションが増えてきたのは1980年代。以前紹介したギャラクティックウォッシュデニムジャケットやケミカルウォッシュデニム、デザイナーズジーンズなど、デニムアイテムの多様化が一気に進んだのが、この時代でした。
現在のヴィンテージ市場で、リーバイスのブラックデニムは「先染め」と「後染め」の2種類に分類されています。ですが、リーバイスのブラックデニムに対する「先染め」「後染め」という呼称は、厳密に言うと正しくないんです。アパレル業界では、生地を織る前の段階で糸を染めることを先染め、織った後の生地を染めることを後染めと呼んでいますが、リーバイスのブラックデニムは「先染め」も「後染め」も、生地を織る前に糸を染めているので、正式にはどちらも“先染め”。リーバイスブラックデニムにおける「先染め」と「後染め」の違いは、前者がヨコ糸(横方向に通す糸)に白糸を、後者が黒糸を使っているということ。生地の裏側がグレーに見えるのが「先染め」です。
話がややこしくなって申し訳ないですが、今回紹介するのは通称「後染め」のアイテムです。「先染め」の良さももちろんありますが、「後染め」のほうが綺麗に色落ちしやすいというのが僕の持論です。百聞は一見にしかず。「後染め」の色落ちを見てみましょう。どちらも1990年代の「後染め」で、右側はほとんど着用していない状態、左側は真っ黒の状態から僕が着用して色落ちさせたものです。特別なことは何もせず、普通に着て普通に洗濯しただけですが、ヴィンテージならではの墨黒の良いアジが生まれていると思いませんか?
ヴィンテージブラックデニムが良い色落ちをする理由は「染料」にあり
1980〜90年代のリーバイスのブラックデニムは、ヴィンテージならではの雰囲気がある色落ちをする個体が多いのですが、その理由は染料にあります。この頃のブラックデニムには、今では環境への配慮などの理由で使われなくなってしまった「サルファブラック(硫化染料)」と呼ばれる黒色染料が用いられていたので、現行のアイテムとは違う色落ちをするんです。また、ブラックデニムはメリハリのある色落ちがしづらいと言われていますが、きちんと糊付けをして洗わずに穿き続けていれば、ブラックデニムでもヒゲやハチノスを出すことは可能です。
ジャケットの品番は70507-4159。ワイドなシルエットなので、今っぽい雰囲気で着られます。ポケットが付いているのも嬉しいポイントですね。1990年代のアイテムは基本的にサイズが大きめなのが特徴。逆に1980年代のアイテムは少しコンパクトなシルエットなので、スッキリと着られます。
個人的に、どんな人でもスタイリングに取り入れやすく汎用性が高いのが、ブラックデニムの良さだと思っています。インディゴブルーのデニムはどうしてもカジュアルな雰囲気が強くなりますが、ブラックデニムならばキレイ目やモード系など、より幅広いアイテムとマッチします。今回紹介したアメリカ製のリーバイスのブラックデニムはここ3、4年で人気が爆発しており、まさに今が旬のヴィンテージ。ぜひガンガン着倒して、ブラックデニムならではの色落ちを楽しんでください。
vol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第32回は「リーバイス(Levi’s®)」の「後染め」ブラックデニム編。
リーバイスのブラックデニム「先染め」と「後染め」、実はどっちも“先染め” 違いは?
ヴィンテージの歴史が始まって以来、圧倒的な人気を誇り続けてきたアイテムが、リーバイスのインディゴブルージーンズです。しかし、近年はその状況に変化が見られるようになってきました。これまで長年レギュラーアイテムとして扱われてきていた、ブラックデニムの注目度が急上昇しているんです。ブラックデニムは歴史が浅いという印象を持っている人もいるかもしれませんが、実は非常に長い歴史があるんです。ブラックデニムが開発されたのはいつ、誰なのかは定かではありませんが、リーバイスが1900年代からブラックデニムを展開しているという資料が確認されているので、少なくとも120年くらいの歴史があると言えます。とはいえ、バリエーションが増えてきたのは1980年代。以前紹介したギャラクティックウォッシュデニムジャケットやケミカルウォッシュデニム、デザイナーズジーンズなど、デニムアイテムの多様化が一気に進んだのが、この時代でした。
現在のヴィンテージ市場で、リーバイスのブラックデニムは「先染め」と「後染め」の2種類に分類されています。ですが、リーバイスのブラックデニムに対する「先染め」「後染め」という呼称は、厳密に言うと正しくないんです。アパレル業界では、生地を織る前の段階で糸を染めることを先染め、織った後の生地を染めることを後染めと呼んでいますが、リーバイスのブラックデニムは「先染め」も「後染め」も、生地を織る前に糸を染めているので、正式にはどちらも“先染め”。リーバイスブラックデニムにおける「先染め」と「後染め」の違いは、前者がヨコ糸(横方向に通す糸)に白糸を、後者が黒糸を使っているということ。生地の裏側がグレーに見えるのが「先染め」です。
話がややこしくなって申し訳ないですが、今回紹介するのは通称「後染め」のアイテムです。「先染め」の良さももちろんありますが、「後染め」のほうが綺麗に色落ちしやすいというのが僕の持論です。百聞は一見にしかず。「後染め」の色落ちを見てみましょう。どちらも1990年代の「後染め」で、右側はほとんど着用していない状態、左側は真っ黒の状態から僕が着用して色落ちさせたものです。特別なことは何もせず、普通に着て普通に洗濯しただけですが、ヴィンテージならではの墨黒の良いアジが生まれていると思いませんか?
ヴィンテージブラックデニムが良い色落ちをする理由は「染料」にあり
1980〜90年代のリーバイスのブラックデニムは、ヴィンテージならではの雰囲気がある色落ちをする個体が多いのですが、その理由は染料にあります。この頃のブラックデニムには、今では環境への配慮などの理由で使われなくなってしまった「サルファブラック(硫化染料)」と呼ばれる黒色染料が用いられていたので、現行のアイテムとは違う色落ちをするんです。また、ブラックデニムはメリハリのある色落ちがしづらいと言われていますが、きちんと糊付けをして洗わずに穿き続けていれば、ブラックデニムでもヒゲやハチノスを出すことは可能です。
ジャケットの品番は70507-4159。ワイドなシルエットなので、今っぽい雰囲気で着られます。ポケットが付いているのも嬉しいポイントですね。1990年代のアイテムは基本的にサイズが大きめなのが特徴。逆に1980年代のアイテムは少しコンパクトなシルエットなので、スッキリと着られます。
個人的に、どんな人でもスタイリングに取り入れやすく汎用性が高いのが、ブラックデニムの良さだと思っています。インディゴブルーのデニムはどうしてもカジュアルな雰囲気が強くなりますが、ブラックデニムならばキレイ目やモード系など、より幅広いアイテムとマッチします。今回紹介したアメリカ製のリーバイスのブラックデニムはここ3、4年で人気が爆発しており、まさに今が旬のヴィンテージ。ぜひガンガン着倒して、ブラックデニムならではの色落ちを楽しんでください。