【令和のマストバイヴィンテージ Vol.30】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
「McGREGOR(マックレガー)」
「ロード ジェフ(LOAD JEFF)」
「タウンクラフト(TOWN CRAFT)」
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
release date

【令和のマストバイヴィンテージ Vol.30】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
release date
by Naoaki Tobe

vol.30 モヘアカーディガン編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第30回はモヘアカーディガン編。

モヘアカーディガンが人気となったきっかけは?

 今回紹介するのは、数あるヴィンテージのなかでも長年支持され続けている、モヘアカーディガンです。モヘアとは、アンゴラ山羊から採取した毛のこと。つまり、羊から採取するウールと同じ、獣毛です。アンゴラ山羊の主な産地はトルコなのですが、アメリカのテキサス州も有名な産地の一つ。こうした事情もあり、モヘア素材を用いたアメリカ古着が数多く流通しているんです。モヘアは毛足が長いので保温力が高く、肌触りがなめらかなのが特徴。吸湿性も備えており、汗をかいても蒸れにくいので、夏用のスーツ生地に用いられることもあります。さらに、独特の光沢感がありファッション的にも◎とメリットの多い素材ですが、一方で静電気が起きやすい、毛が抜けやすいといったデメリットもあります。

 モヘアカーディガンがファッションアイテムとして人気を集めるきっかけとなったのが、前回のフェードスウェット編でも登場したカート・コバーン(Kurt Cobain)です。ぼろぼろのジーンズに、ヨレヨレのネルシャツやTシャツを着て、モヘアカーディガンを羽織った彼の服装は、当時のアメリカ西海岸の若者のごく一般的な普段着でした。カート・コバーンは普通の若者と変わらない、だらしなささえ感じられるような格好でステージに立っていたんです。その後、カート・コバーンの服装が「グランジ(grunge)=薄汚れた、不潔な」と名付けられ、彼が率いるバンド ニルヴァーナ(Nirvana)に代表されるオルタナティブロックも、グランジと呼ばれるようになりました。つまり、カート・コバーンは「音楽シーンでもファッションシーンでも新たなジャンルを切り拓いた」と言えるんです。彼の存在がいかに後のカルチャーに大きな影響を及ぼしたか、お分かりいただけたでしょうか。

モヘアカーディガンの選び方

 モヘアはウールやアンゴラ、アクリル、ナイロンなどと混紡されることが多いのですが、モヘアカーディガンを選ぶときのひとつの指針となるのが、モヘアの混率です。先述したように、モヘアの特徴のひとつが毛足の長さ。ヴィンテージ市場では、毛足の長いアイテムがより価値が高いとされており、基本的にモヘアの混率が高いほうが、毛足が長くなります。

 こちら黒の個体は、アメリカの老舗ブランド「McGREGOR(マックレガー)」のカーディガンでモヘア65%。かなり高い混率であることに加え、この「Powder Snow(パウダースノー)」という表記があるアイテムは、クオリティが高い個体が多いことで知られています。混紡されているのは、ウール素材。近年のアイテムになると、アクリル混紡のものが増えますが、個人的にはモヘア×ウールの質感が好みです。

 こちらの白の「ロード ジェフ(LOAD JEFF)」も、モヘアの名作を数多く生み出しているブランドで、シルエットが良いアイテムが多いのが特徴。ブラックはモヘアカーディガンのなかでも随一の人気を誇るカラーです。

 モヘアカーディガンは若者の普段着になるくらいポピュラーなアイテムだったので、様々なブランドが展開しています。こちらは、アメリカの老舗百貨店「J.C.ペニー(J. C. Penney)」のプライベートブランド「タウンクラフト(TOWN CRAFT)」のもの。大人っぽい色合いなので、キレイ目ファッションにもマッチしそうです。  また、無地だけではなく、アーガイル柄やボーダー柄のアイテムも存在しています。柄物は無地よりも見つかりづらい印象です。

 また、無地だけではなく、アーガイル柄やボーダー柄のアイテムも存在しています。柄物は無地よりも見つかりづらい印象です。

 モヘアカーディガンの相場は、ブラックなどの人気のカラーで、状態が良いものならば20万円オーバーの個体もあります。。特に1950〜60年代のアイテムが評価されていますが、同じ年代のものでも、毛足が短いと価格が10万円を切ることもありますし、70年代以降のアイテムならば、1〜2万円からでも手に入れられます。モヘアカーディガンは元々人気が高いアイテムですが、最近はヴィンテージTシャツ人気の影響でTシャツを見せて着こなせるカーディガンの需要は高まっていますし、暖冬傾向が続く昨今は保温力が高いモヘアカーディガンはちょっとしたアウター代わりにもなることもあり、今でも相場は上昇傾向にあります。自分の琴線に触れるアイテムに出会えたら、早めに手に入れておくことをオススメします。今回のアイテムはヴィンテージショップ「フルギーク(Frgeek)」の池谷さんからご提供いただきました。ヴィンテージモヘアアイテムの取り扱いが豊富ですので、気になった方は是非訪れてみてください。

vol.30 モヘアカーディガン編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第30回はモヘアカーディガン編。

モヘアカーディガンが人気となったきっかけは?

 今回紹介するのは、数あるヴィンテージのなかでも長年支持され続けている、モヘアカーディガンです。モヘアとは、アンゴラ山羊から採取した毛のこと。つまり、羊から採取するウールと同じ、獣毛です。アンゴラ山羊の主な産地はトルコなのですが、アメリカのテキサス州も有名な産地の一つ。こうした事情もあり、モヘア素材を用いたアメリカ古着が数多く流通しているんです。モヘアは毛足が長いので保温力が高く、肌触りがなめらかなのが特徴。吸湿性も備えており、汗をかいても蒸れにくいので、夏用のスーツ生地に用いられることもあります。さらに、独特の光沢感がありファッション的にも◎とメリットの多い素材ですが、一方で静電気が起きやすい、毛が抜けやすいといったデメリットもあります。

 モヘアカーディガンがファッションアイテムとして人気を集めるきっかけとなったのが、前回のフェードスウェット編でも登場したカート・コバーン(Kurt Cobain)です。ぼろぼろのジーンズに、ヨレヨレのネルシャツやTシャツを着て、モヘアカーディガンを羽織った彼の服装は、当時のアメリカ西海岸の若者のごく一般的な普段着でした。カート・コバーンは普通の若者と変わらない、だらしなささえ感じられるような格好でステージに立っていたんです。その後、カート・コバーンの服装が「グランジ(grunge)=薄汚れた、不潔な」と名付けられ、彼が率いるバンド ニルヴァーナ(Nirvana)に代表されるオルタナティブロックも、グランジと呼ばれるようになりました。つまり、カート・コバーンは「音楽シーンでもファッションシーンでも新たなジャンルを切り拓いた」と言えるんです。彼の存在がいかに後のカルチャーに大きな影響を及ぼしたか、お分かりいただけたでしょうか。

「McGREGOR(マックレガー)」

モヘアカーディガンの選び方

 モヘアはウールやアンゴラ、アクリル、ナイロンなどと混紡されることが多いのですが、モヘアカーディガンを選ぶときのひとつの指針となるのが、モヘアの混率です。先述したように、モヘアの特徴のひとつが毛足の長さ。ヴィンテージ市場では、毛足の長いアイテムがより価値が高いとされており、基本的にモヘアの混率が高いほうが、毛足が長くなります。

 こちら黒の個体は、アメリカの老舗ブランド「McGREGOR(マックレガー)」のカーディガンでモヘア65%。かなり高い混率であることに加え、この「Powder Snow(パウダースノー)」という表記があるアイテムは、クオリティが高い個体が多いことで知られています。混紡されているのは、ウール素材。近年のアイテムになると、アクリル混紡のものが増えますが、個人的にはモヘア×ウールの質感が好みです。

 こちらの白の「ロード ジェフ(LOAD JEFF)」も、モヘアの名作を数多く生み出しているブランドで、シルエットが良いアイテムが多いのが特徴。ブラックはモヘアカーディガンのなかでも随一の人気を誇るカラーです。

 モヘアカーディガンは若者の普段着になるくらいポピュラーなアイテムだったので、様々なブランドが展開しています。こちらは、アメリカの老舗百貨店「J.C.ペニー(J. C. Penney)」のプライベートブランド「タウンクラフト(TOWN CRAFT)」のもの。大人っぽい色合いなので、キレイ目ファッションにもマッチしそうです。  また、無地だけではなく、アーガイル柄やボーダー柄のアイテムも存在しています。柄物は無地よりも見つかりづらい印象です。

 また、無地だけではなく、アーガイル柄やボーダー柄のアイテムも存在しています。柄物は無地よりも見つかりづらい印象です。

 モヘアカーディガンの相場は、ブラックなどの人気のカラーで、状態が良いものならば20万円オーバーの個体もあります。。特に1950〜60年代のアイテムが評価されていますが、同じ年代のものでも、毛足が短いと価格が10万円を切ることもありますし、70年代以降のアイテムならば、1〜2万円からでも手に入れられます。モヘアカーディガンは元々人気が高いアイテムですが、最近はヴィンテージTシャツ人気の影響でTシャツを見せて着こなせるカーディガンの需要は高まっていますし、暖冬傾向が続く昨今は保温力が高いモヘアカーディガンはちょっとしたアウター代わりにもなることもあり、今でも相場は上昇傾向にあります。自分の琴線に触れるアイテムに出会えたら、早めに手に入れておくことをオススメします。今回のアイテムはヴィンテージショップ「フルギーク(Frgeek)」の池谷さんからご提供いただきました。ヴィンテージモヘアアイテムの取り扱いが豊富ですので、気になった方は是非訪れてみてください。