【令和のマストバイヴィンテージ Vol.9】 今買っておくべき名品は? by  Naoaki Tobe
Category: COLUMN
エルメスジュエリー アクロバット Imaged by FASHIONSNAP
ぷっくりとしたコマのボリューム感もアクロバットの魅力 Imaged by FASHIONSNAP
留め具のコマにHERMÈSの刻印 Imaged by FASHIONSNAP
写真上がGMサイズ、下がMMサイズ Imaged by FASHIONSNAP
シリアルナンバー入りのオーダーモデルの刻印(シリアルナンバーにはぼかしを入れております) Imaged by FASHIONSNAP
連載第7回でご紹介したシュプリームのゴンズジャケットにもマッチするデザイン Imaged by FASHIONSNAP
VCM inc./
代表取締役 十倍直昭

2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCMを立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

https://www.instagram.com/naoaki_tobe/
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【令和のマストバイヴィンテージ Vol.9】
今買っておくべき名品は?

by Naoaki Tobe
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by Naoaki Tobe

vol.9 エルメス アクロバット編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第9回は「エルメス(HERMÈS)」のブレスレット アクロバット編。

一生モノのジュエリーを求めて辿り着いた逸品

 この連載の3回目で「ヘラクレス」を紹介しましたが、現在ヴィンテージジュエリー界隈で一番ホットなブランドはエルメス。なかでもトップクラスの人気を誇るモデルが、今回紹介する「アクロバット」です。

 僕が「アクロバット」に出会ったのは7、8年ほど前。歳を重ねていくにあたり、「一生付けられるジュエリーが欲しいな」と思うようになったんです。これまでメンズジュエリーと言えば、バイカー系ブランドやメキシカンジュエリー、ネイティブアメリカンジュエリーなどがメジャーでしたが、古着中心のスタイリングを良い塩梅で雰囲気を中和してくれるジュエリーを探していたところ、エルメスのジュエリーを見つけて思わず膝を打ちました。エルメスのジュエリーはマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)在籍時のレザーブレスレットを使っていたこともあり、初めてというわけではなかったですが、それをきっかけに本格的にハマっていきました。そして当時、リサーチを重ねた末に見つけたのが「アクロバット」なんです。

「アクロバット」サイズ選びのポイント

 エルメスのジュエリーで価値が高くなる条件が3つあります。

「1.人気がある」 「2.限定的に生産されたものである」 「3.生産数が少ない」

 エルメスのジュエリーは大きく分けて、定番モデルとして長年に渡り作り続けられるものと、限られた期間だけ販売されたものの2種類に分類されるのですが、2006年秋冬シーズンに発売され即完売したアクロバットは、上記の条件を全て満たしています。

 僕がエルメスのジュエリーを好きな理由の一つが、「高い革新性」です。歴史ある老舗ブランドはどうしてもデザインが保守的になりがちですが、エルメスは違います。革新的なデザインを高い技術力で実現させる、チャレンジングな姿勢に惹かれるんです。

 このアクロバットも、例に漏れず革新的なデザインが魅力ですが、最大の特徴はコマが全て取り外し可能なこと。つまり、自分でコマ数の調節ができるんです。わざわざお店に持っていかなくてもサイズ調節ができるのは非常に便利ですし、パートナーとシェアすることもできます。

 コマのひとつひとつには細かい切れ目が入っており、そこで取り外しができるようになっているんですが、この切れ目の作りが絶妙なんです。切れ目が少しでも大きかったらすぐに取れてしまいますし、小さかったら取り外しができない。全部手作業で製作されているのですが、この工程があまりにも大変だったために少数生産だったのでは、と推測されます。

 もちろん、スタイリッシュかつ普遍性を感じられる意匠も素晴らしい。エルメスのロゴがシンプルに刻印されているのも、さりげなくて素敵だと思います。

 アクロバットにはGM(grand model)とMM(moyenne model)といった2サイズがあり、コマの大きさが違います。僕が好んで着用しているのは小ぶりなMMの方。僕は他にもアクセサリーを色々と付けるので、MMをチョイスしています。アクセサリーを主役として楽しみたい方や、手元にボリュームが欲しい方は、存在感のあるGMサイズがオススメです。

オリジナルとオーダー品の2種類が存在、違いは?

 アクロバットは2006年秋冬の1シーズンのみ販売されたと先ほどお話しましたが、実は2020年頃までは特別な顧客からオーダーすることが可能だったようです。そして自分なりにリサーチした結果、2006年のオリジナルと、後年のオーダーモデルではコマの作りや重さに微妙な違いがあることが分かりました。オーダーモデルはおそらくキャストが異なるため、コマとコマの間が少し大きくなっています。また、僅かに色味が異なり、重量もやや軽いので、違う割金が使われているのではないかと推察しています。

 アクロバットは、エルメスのジュエリーの評価を高めた、名作中の名作。シルバージュエリーとしては考えられないような高い相場になっていますが、さらに値上がりする可能性は十分にあります。偽物もかなり出回っていますし、他ブランドから似たようなデザインのものがたくさん販売されていたりもしますが、価値ある「本物」を、多くの人に知っていただけたら嬉しいです。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭

vol.9 エルメス アクロバット編

 とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。

 でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第9回は「エルメス(HERMÈS)」のブレスレット アクロバット編。

一生モノのジュエリーを求めて辿り着いた逸品

 この連載の3回目で「ヘラクレス」を紹介しましたが、現在ヴィンテージジュエリー界隈で一番ホットなブランドはエルメス。なかでもトップクラスの人気を誇るモデルが、今回紹介する「アクロバット」です。

 僕が「アクロバット」に出会ったのは7、8年ほど前。歳を重ねていくにあたり、「一生付けられるジュエリーが欲しいな」と思うようになったんです。これまでメンズジュエリーと言えば、バイカー系ブランドやメキシカンジュエリー、ネイティブアメリカンジュエリーなどがメジャーでしたが、古着中心のスタイリングを良い塩梅で雰囲気を中和してくれるジュエリーを探していたところ、エルメスのジュエリーを見つけて思わず膝を打ちました。エルメスのジュエリーはマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)在籍時のレザーブレスレットを使っていたこともあり、初めてというわけではなかったですが、それをきっかけに本格的にハマっていきました。そして当時、リサーチを重ねた末に見つけたのが「アクロバット」なんです。

ぷっくりとしたコマのボリューム感もアクロバットの魅力 Imaged by FASHIONSNAP

「アクロバット」サイズ選びのポイント

 エルメスのジュエリーで価値が高くなる条件が3つあります。

「1.人気がある」 「2.限定的に生産されたものである」 「3.生産数が少ない」

 エルメスのジュエリーは大きく分けて、定番モデルとして長年に渡り作り続けられるものと、限られた期間だけ販売されたものの2種類に分類されるのですが、2006年秋冬シーズンに発売され即完売したアクロバットは、上記の条件を全て満たしています。

 僕がエルメスのジュエリーを好きな理由の一つが、「高い革新性」です。歴史ある老舗ブランドはどうしてもデザインが保守的になりがちですが、エルメスは違います。革新的なデザインを高い技術力で実現させる、チャレンジングな姿勢に惹かれるんです。

 このアクロバットも、例に漏れず革新的なデザインが魅力ですが、最大の特徴はコマが全て取り外し可能なこと。つまり、自分でコマ数の調節ができるんです。わざわざお店に持っていかなくてもサイズ調節ができるのは非常に便利ですし、パートナーとシェアすることもできます。

 コマのひとつひとつには細かい切れ目が入っており、そこで取り外しができるようになっているんですが、この切れ目の作りが絶妙なんです。切れ目が少しでも大きかったらすぐに取れてしまいますし、小さかったら取り外しができない。全部手作業で製作されているのですが、この工程があまりにも大変だったために少数生産だったのでは、と推測されます。

 もちろん、スタイリッシュかつ普遍性を感じられる意匠も素晴らしい。エルメスのロゴがシンプルに刻印されているのも、さりげなくて素敵だと思います。

 アクロバットにはGM(grand model)とMM(moyenne model)といった2サイズがあり、コマの大きさが違います。僕が好んで着用しているのは小ぶりなMMの方。僕は他にもアクセサリーを色々と付けるので、MMをチョイスしています。アクセサリーを主役として楽しみたい方や、手元にボリュームが欲しい方は、存在感のあるGMサイズがオススメです。

留め具のコマにHERMÈSの刻印 Imaged by FASHIONSNAP

オリジナルとオーダー品の2種類が存在、違いは?

 アクロバットは2006年秋冬の1シーズンのみ販売されたと先ほどお話しましたが、実は2020年頃までは特別な顧客からオーダーすることが可能だったようです。そして自分なりにリサーチした結果、2006年のオリジナルと、後年のオーダーモデルではコマの作りや重さに微妙な違いがあることが分かりました。オーダーモデルはおそらくキャストが異なるため、コマとコマの間が少し大きくなっています。また、僅かに色味が異なり、重量もやや軽いので、違う割金が使われているのではないかと推察しています。

 アクロバットは、エルメスのジュエリーの評価を高めた、名作中の名作。シルバージュエリーとしては考えられないような高い相場になっていますが、さらに値上がりする可能性は十分にあります。偽物もかなり出回っていますし、他ブランドから似たようなデザインのものがたくさん販売されていたりもしますが、価値ある「本物」を、多くの人に知っていただけたら嬉しいです。 編集:山田耕史 語り:十倍直昭

写真上がGMサイズ、下がMMサイズ Imaged by FASHIONSNAP